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東京高等裁判所 昭和40年(ラ)379号 決定

抗告人 成田五郎 外一名

相手方 小池太市

主文

原決定を取消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

抗告人両名の抗告理由は別紙の通りである。

よつて按ずるに、本件記録によれば、本件競売申立にかかる抵当権は、もと渡辺兵五郎が昭和二七年二月二〇日荒川四郎に対し金一五万円を、利息月一分五厘、弁済期昭和二九年二月二〇日と定めて貸与し、その担保として本件競売不動産につき新潟地方法務局昭和二七年三月三日受付第一七九二号を以て抵当権の設定登記手続を了し、次いで小池太市が昭和三九年一月一六日右渡辺より右の貸付金債権金一五万円とこれに対する昭和二九年二月二一日以降の月一分五厘の割合による損害金債権の譲渡及び右抵当権の譲渡をうけ、昭和三九年一月二三日新潟地方法務局受付第一三二六号を以てその移転登記を経由したものであるところ、右抵当権付債権に対して昭和四〇年二月一七日新潟地方裁判所昭和四〇年(ヨ)第一八号仮差押決定を以て、仮差押債権者成田五郎のため仮差押命令が発せられ、その頃仮差押債務者小池太市、仮差押第三債務者荒川四郎に対し夫々その決定正本が送達されると共に前記抵当権につきその旨の登記簿記入がなされたこと及び抗告人藤塚は昭和三七年一一月一日荒川より右不動産を買受け所有者となつたことが認められる。

而して被担保債権に対し仮差押命令が発せられ、それが執行されたときは、当該債権を担保する抵当権の実行はこれをなしえぬものと解されるから、前記の通り仮差押命令が執行された以上、本件競売手続はこれを続行すべからざるものとなつたと謂うべきである。

よつて本件競落は不許可とすべきものであるから、爾余の抗告理由に対する判断を省略し、主文の通り決定した。

(裁判官 岸上康夫 小野沢龍雄 室伏壮一郎)

別紙

抗告大成田五郎の抗告理由

抗告人成田はかねてより本件不動産に根抵当権を有し、その旨の登記手続を了したものであるが、昭和四〇年二月一七日新潟地方裁判所昭和四〇年(ヨ)第一八号仮差押決定により、本件競売申立人小池太市の債務者荒川四郎に対する債権を仮差押したから、本件抵当権による競売手続は不法不当のものである。

抗告大藤塚順治の抗告理由

抗告人藤塚は本件競売不動産の所有者であるところ本件競売申立にかかる被担保債務は、債務者荒川四郎において借受けた事実なく、仮に別債務があるとしても、既に弁済ずみである。

そればかりでなく、右の被担保債権については成田五郎の主張する通り仮差押をうけたから、本件競売は不当である。

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